『電子書籍Walker』2010年11月のバックナンバー
登録フォーム
電書フリマ考察レポート
電子書籍を制作・販売するにあたっては
現状、「ぶつかる壁」が多々あります。
制作面でいえば「epubがわからない…」
「epubを理解できても縦書きやルビをどうする…」
「コピーされたらどうしよう……」などなどです。
販売面でいえば、
iBooksもGoogleエディションもキンドル・ストアも、
日本向けサービスを開始していないため
「どこでどう売る?」「決済をどうする?」
といったことが、壁になっています。
これらの壁をクリアにしているのが
電書フリマです。
-------------------------------------
■ギターで悩むのはバンドを始めてから
-------------------------------------
電書フリマは、
epubへの変換システムを用意しているため
出品者は、テキスト原稿や画像を用意すれば
作品を出品できます。
電子書籍の受け渡しは、
メールを使っています。
購入者のメールアドレスに
作品をダウンロードできるURLを
送っているのです。
課金については「対面販売」なだけに
その場で 本の代金を頂戴するという仕組み。
注目したいのは、このシンプルさです。
作ることも、売ることも
このくらいシンプルに考えられれば
電子書籍の可能性は無限に広がります。
マンガ家の うめさん が第二部のトークショーで
次のように話していたのが印象的でした。
「(電子書籍の)プラットフォームを
何にしようと悩んでる人って、バンドを始める前に
どのギターにしよか悩んでる人みたい」
-------------------------------------
■バス旅行しながら電書を売り歩く
-------------------------------------
補足すれば、epubへの変換については
既に無料のサービスやソフトが多々あります。
つまり、その気になれば
誰でもすぐに、電書フリマを始められるわけです。
実際、過去に出品された方の中には
個人で電子書籍の対面販売をしている方もおり、
歌人の 佐々木あらら さんは西日本へ
バス旅行しながら電書を売り歩くと話していました。
今後は、個人が立ち上げる小規模の
電子出版社が増えると思うので
電書フリマのようなイベント、ショップは
ますます多くなるでしょう。
では、電子書籍の制作・販売において
「これだけは考えておきたいこと」とは
何でしょうか?
-------------------------------------
■読者フォローと販促(プロモーション)
-------------------------------------
ここでは、特に大切と思われるポイントを
2つだけお話したいと思います。
[1]読者フォロー
紙の本であれば、一度購入した本は
なくしたり、捨てたりしない限り、
いつまでも読むことができます。
でも、電子書籍はそうはいきません。
OSのバーションアップや故障、
機種変更などによって、いきなり
読めなくなってしまうこともあります。
そのため 制作側はこうした事態に
どう対処するかを決めておく必要があります。
具体的には、次のようなことです。
・どのような体制で対応するのか
・OSのバージョンアップなどにいつまで対応するのか
・なにを保障するのか
・上記3つをどのような手段で購入者(読者)に伝えるのか
[2]販促(プロモーション)
電書フリマのトークショーでは
販促に関する話題も出ました。
興味深かったのは、次の2つです。
「パブーでは、内容の同じ電子書籍を
無料版と有料版で販売し、面白かったら
代金を払ってもらうカンパ制でやってる人もいる」
「最初は低価格で販売しはじめ、内容の
ボリュームアップとともに値上げしている」
いずれも価格に関する話です。
紙の本は、取次の関係などもあって
最初に決めた価格を 徐々に値上げする、
というようなことはできません。
しかし、電子書籍なら
価格変動も含めたプロモーションが
おこなえます。
たとえば、発売後1週間は定価の半額、
あるいは著者の誕生日の月は
バースデーキャンペーンで半額、
といったプロモーションです。
通販をされている方にすれば
新しい話ではないですが
本という分野は この辺りも含めて
まだまだ検討・改善の余地があります。
-------------------------------------
■これからの課題
-------------------------------------
先の読者フォローや販促につながる話ですが
この先は、著者の在り方(作業範囲)についても
議論が必要な気がしています。
電子書籍が普及すれば
著者自身が作品を宣伝したり、
直接的に売買する機会も増えていくでしょう。
最近は、ツイッターや
フェイスブックなどを使って ブランディングや
コミュニティー作りをする流れになっていますが
その意味では、もう前哨戦が始まっているとも言えます。
ただ、電書フリマのような
一時的なイベントならともかく
著者が恒常的に作品の売買や
読者のアフターフォローに関わらなければいけないのは
良い環境と言えるのか疑問です。
「機種変更したら、●●先生の電子書籍が
2010.11.15号
読めなくなったんだけど、どうすれば読めるようになる?」
「●●先生の電子書籍、間違って削除したみたいです。
もう一度送ってください!」
こうした対応に時間を奪われては
良質な作品づくりも
ままならなくなるのではないでしょうか。
個人的には、クリエイターは
創作活動に集中できる環境を模索すべきでは…
と感じています。
これらを議論できる機会は
もう少し先かもしれませんが
電子書籍を制作・販売していく際には
検討しておきたいことの1つだと思います。
おススメの海外アプリ
2010.11.08号
今週は趣向を変えて、
おススメの海外アプリをご紹介します。
■Flipboard
http://bit.ly/9BiMd7
■zinio
http://bit.ly/auXjoR
■ELLE
http://bit.ly/a7cSOz
■FRED PERRY
http://bit.ly/9nE6wq
どれも一見の余地ありですよ!
2010年11月の関連記事
- 2011年01月
- 電子書籍の情報メルマガ『電子書籍Walker』の2011年1月のバックナンバー。『大会1ヶ月前からの完走計画』『ザッポス伝説』。
- 2010年12月
- 電子書籍の情報メルマガ『電子書籍Walker』の2010年12月のバックナンバー。
- 2010年10月
- 電子書籍の情報メルマガ『電子書籍Walker』の2010年10月のバックナンバー。『電子書籍メディア論・週刊イーブックストラテジー』『新・混沌の館』『電子書籍の衝撃』。
- 2010年9月
- 電子書籍の情報メルマガ『電子書籍Walker』の2010年9月のバックナンバー。『ムツゴロウの東京物語』/『インシテミル』/『朗読少女』/『夢をかなえるツイッター 〜いいことが起こるつぶやきのコツ』
- 2010年8月
- 2010年8月のバックナンバー。『誰でも作れる電子書籍 今すぐできる制作から販売まで PDF版』/『Twitter社会論 Deluxe Edition』